第14号 写真集 『一路』

 今号では、2017年の10月に刊行した写真集『一路』について触れる。この本は、私が2012年より参加している「GRAF Publishers」と『九州』をテーマの柱として掲げ、写真誌を発行し国内外で精力的に発表活動を行っているレーベル「写真同人誌 九州」の面々、そして私の師匠である写真家の権泰完らと共に作った写真集である。私のページでは天草各地の海岸を撮影した写真作品を11点掲載しており、来月には福岡での展示を控えているので、この機会に少しばかり紹介させていただく。これまでの号と比べると天草要素が随分と薄めではあるがご容赦願いたい。

・『一路』が出来るまで

 2016年の秋、私達「GRAF Publishers」(以下、GRAF)の代表である写真家・本山周平と「写真同人誌 九州」(以下、九州)の松岡美紀・内田芳信の両名のひょんな話がきっかけで、この写真集作りが緩やかに動き出した。GRAFの面々は私を除いて皆が東京在住、「九州」のメンバーと権泰完は福岡市に拠点を置いており、基本的にはグループチャットを使い、制作の進行状況を共有していた。指標となるテーマについての話し合いは順調に進んではいたのだが、やはり核心が少しばかり朧げになってしまう。諸々のネットでのやり取りが発達した昨今でも、こういった出版物を皆で作るには、やはり顔を突き合わせ、現物を交えながら話しを進めることが一番なのだと痛感する。目標は2017年の秋に開催される「TOKYO ART BOOK FAIR 2017」へ出品することに決定した。

 そうこうしながら、どういった本にするのか?掲載写真の枚数は?ページの構成やデザインは?印刷所は?部数は?価格は?翻訳は?と次々に積みあがる決めなければいけないこと。これまでに私達は『GRAF』という写真誌を12冊発行しており、その経験がこの決定事項に関して大いに役立った。デザインは、尾中俊介氏(Calamari Inc.)に依頼することとなり、参加メンバー7名とデザイナー尾中氏が揃う日程を調整し、2017年6月に博多にある九州ビジュアルアーツ・写真学科の教室にて掲載する写真の最終会議が行われた。8名が集うというのは中々に難しく随分とギリギリの日程となったがやはり直接のやり取りは進行がスムーズだ。本の大きさやレイアウトの構成が徐々に見えてきたのも、この会議の後からでそれぞれが持つ写真集へのイメージが固まってきていた。

・特別座談会収録 in 中洲・酒一番

 会議の後は、中洲では私達の定番のお店「酒一番」にて『一路』に掲載する特別座談会を収録する。聞き手には九州ビジュアルアーツ・写真学科の学科長である柳先生だ。皆の出会いから始まり、博多で運営していた写真専門ギャラリー「PHOTO GALLERY KYUSHU  銀」のことや各々の写真への思いを美味しいお酒とともに熱く語らった。酒が進むにつれて内容は過激になっていく。根がパンクスであるGRAF代表・本山周平の鋭い言葉が心に刺さる。強かに酩酊し後半の記憶は霞んでしまっていた。

 拠点を移し、中洲の出会い橋でまだまだ痛飲は続いた。酔っ払っている時の記憶は定かではないが録音データがあるので大凡の出来事や話題を後に確認することができる。録音したものを文字に起こすのは私の役目である。時間を置くと、なんだか気持ちが薄まりそうな気がしたので天草へ帰ってから直ぐに取り掛かった。酩酊して頓珍漢なことを言っている自身の声を聞くのは随分と堪える苦行でもあったが、何とか文字を起こしたデータを次の担当であるGRAFメンバー(当時)の片山くんに渡すことができた。

(写真一部:國領翔太 / GRAF Publishers)

・写真集『一路』完成!TABFへ!

 「九州」の松岡氏が中心となり、急ピッチで制作は進行し、遂に写真集『一路』が完成。無事に目標であった「TOKYO ART BOOK FAIR 2017」より販売を開始する。限定300部なので、それぞれの取り分を除くと販売できる冊数は随分と少なくなってしまった。

 

 このイベントには、天草を離れることが叶わず私は参加できなかった。毎度のことながら販売などにも参加出来ずで仲間達に申し訳なく思っている。(写真:写真同人誌 九州 × GRAF Publishersより転載)

・『一路 刊行記念写真展』東京展

 2018年の2月には、東京・小伝馬町のギャラリー「Roonee 247 Fine Arts room 1」にて写真集『一路』の刊行記念写真展を開催。掲載している写真作品を展示し、多くの人々に見ていただく。開催したクロージングパーティーには多数の方々にお越しいただいた。そして、このイベントにも仕事の為に参加出来ずの私であった。(写真:内田芳信 / 写真同人誌 九州)

・次回は『一路』 刊行記念 福岡展

 刊行されてからのイベントに参加出来ないばかりの私だったが来月に福岡市の「富士フィルムフォトサロン 福岡」にて開催される写真展には、搬入と初日に参加できることとなった。東京展では写真集に掲載している作品だけを展示していたのだが、今回の福岡展では、また新たに天草の作品を追加展示しようと画策中である。

●『一路』刊行記念写真展 福岡展

権泰完/本山周平/松岡美紀/内田芳信/錦戸俊康/片山亮/國領翔太

期間:2018.7.6(金)-7.11(水)

会場:富士フィルムフォトサロン 福岡

OPEN 10:00-18:30

〒812-0018 福岡市博多区住吉3丁目1-1 富士フィルム福岡ビル1F

協力:専門学校 九州ビジュアルアーツ・写真学科

Tel:092-474-9266(担当:柳)

入場無料となっておりますのでどなた様もお気軽にお越し下さい。会場にて写真集「一路」を販売致します。

 

写真集『一路』 ¥3,700 / H203×W254mm / 112頁 / 300部 /特別座談会収録

写真に出会い、様々な光景と人々と出会い、導かれた。

そして、写真が教えてくれた。

一路のようにまっすぐに向き合う写真こそが、真の写真であると信じたい。

写真が誰でも簡単に撮れるようになった時代であるからこそ、強く掲げていきたい。

己の生きざまや魂を写し出す。

我々の写真は決して変わることはない。

このはじまりの地より、一路に導かれ、想いを掲げ、届けていきたい。

 写真集『一路』の巻頭には松岡美紀による熱いテキストが掲載されている。この言葉を胸に刻んでこれからも写真を撮り続けていくのだろう、写真がまた私をどこかへ連れて行ってくれるはずだ。来月の展示をどうしようか、最近はそのことばかりを考えている。

写真集『一路』より


写真・文 / 錦戸 俊康